人を動かす

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

この本は1937年に初版が発行され,1999年に新装改訂版が出された,かなり古いものです。にもかかわらず,Amazon.co.jpの2006年度年間トップセラーでTop10入りしていたと記憶しています。

この本では,人とどのように接していけば好かれたり説得できるか,ということが事例とともに示されています。

1年に一回ぐらいは読み返したい,と思いました。仕事だけでなく,家庭や子育てにも通じる内容だと思います。(実際,最後の付録のタイトルは「幸福な家庭をつくる七原則」)本当にたくさんのことについて,思い返す良い機会になりました。家族との接し方についても,自分を見直す良い機会になりました。

たくさんの原則が書かれていますが,ざっくりまとめると

「重要感を持たせる」/「自尊心を傷つけない」

ことが,人との関わり方で最も重要な点だということだと思います。技術者のように自分にプライドを持って仕事をしている人々に対しては,特に重要ではないでしょうか。

「重要感を持たせる」にはやはり「心からほめる」ことが第一。でも「ほめる」って案外難しいですよね。しかも上っ面ではなく「心から」。特に相手が技術者の場合には,論理的に良い点を説明しながら「ほめる」必要がありそうです。何か間違いを指摘するときも,まずほめることで,指摘を受ける方も素直になれるというもの。

ただ,この本には「そうはいっても実践するのは難しそう」というものが自分にとっていくつかありました。例えば,「思いつかせる」。以下,引用です。

人から押し付けられた意見よりも,自分で思いついた意見のほうを,われわれは,はるかにたいせつにするものである。すると,人に自分の意見を押しつけようとするのは,そもそもまちがいだといえる。暗示を与えて,結論は相手に出させるほうが,よほど利口だ。

これはなかなか難しいと思います。自分の意見を押し付けるのではなく,あたかも解決すべき共通の問題があり,一緒に解決策を見つけ出すように話を持っていくような感じでしょうか。

一方,それほど難しくなさそうでこれからどんどん使おうと思ったのは,「自分のあやまちを話す」です。相手の過ちに対し注意を与えるとき,「僕が若い頃も同じ間違いをよくやらかしたから偉そうなことは言えないけど,どうだろう,こんなふうにしてみては。。。」という感じです。こういう風に謙虚な態度で注意すると,相手はそれほど不愉快な思いをせずにすみそうです。

とにかく,技術者/研究者としては,技術だけでなく言葉の使い方等も非常に重要だなと改めて痛感しました。