素人のように考え,玄人として実行する
- 作者: 金出武雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2003/06
- メディア: 単行本
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金出先生は,1980年に35歳のときに渡米,1991年から10年間,CMUのロボット研究所の所長を務められた,有名な研究者。その豊富な経験から,研究を進める上での考え方や取り組み方をこの本で紹介しています。
この本は4部構成。
1. 素人のように考え,玄人として実行する
2. コンピュータが人にチャレンジしている
3. 「自分の考え」を表現し,相手を説得する
4. 決断と明示のスピードが求められている
やはりメイントピックは上記1.。抽象化,問題の分割やKISS"Keep It Simple, Stupid"の重要性,アイデアをどんどん人に話そう,などなど,ためになる話がいっぱいです。その中でも強く同感したのは,
独創はひらめかない
偉大な発明家についてよく,散歩してたら突然ひらめいた,とか,学生時代は成績が悪かった,といったエピソードが語られるが,実際は,多くの知識,経験を積み重ねた上で「ひらめいた」のであり,学生時代は単に何かの理由で勉強しなかっただけだろうと。
実際,金出先生がご存知の凄い仕事をした人たちはみな博識だそうです。やはり勉強はできるに越したことはない,ということでしょうか。
上記2.では,コンピュータがいずれ人間を超えるだろう,といった話がされています。
上記3.は国際学会等でいかに講演,会話するか,いかにドキュメントを書いて伝えるか,ということが書かれています。良い研究は知られてこそ,のものだ,ということで,上手に伝える能力は研究者に必須でしょう。
ここで,非常に参考になったのは,国際学会における講演の仕方で,「前置きなしに話す」です。やはり聴衆の関心が一番高いのは話の初めであり,だんだん眠くなる。したがって,最も伝えたいことを前半に持っていくべきだ,ということです。実際は,研究の背景等から入るのが一般的ですが,あまり長々とやると,確かに退屈かもしれません。
あと,面白かったのは,
英会話は,「外国人にしてはうまいな」と思われるぐらいがちょうどよい
です。外国人にたどたどしい日本語でしゃべられると微笑ましく思いますよね。そんなとき,「アナタ,バカデスカ」といわれても腹が立たないものです。つまり,英語がヘタな段階では,何かまずいことを言っても間違いとして許されるわけです。ところが,だんだん上手になってくると相手は「英語がわかっているのではないか」と思い始める。この段階でむかつくことを言われると相手は「こいつ,本気で言っているんじゃないか」と腹を立ててしまう。
ということで,ほどほど上手か,めちゃくちゃ上手か,が良いところで,その中間だとまずそうですね。
上記4.では,例えば,アメリカ人は一人で決断し「私がやった」といいたがる,ということが紹介されています。そういった決断力を身につけ人を引っ張るリーダシップが日本からも出てきてほしい,と訴えています。