フラット化する世界(上)
- 作者: トーマス・フリードマン,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/05/25
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 119回
- この商品を含むブログ (291件) を見る
Windows Vistaの開発では,アメリカで設計/実装し,インドでテストする,という形でワールドワイドな開発がされたそうです。このように,インターネットの普及によって世界がフラット化している,という現象を解説し,我々先進国は今後どのように生き残ればよいか,みたいな内容です。
上巻では主に,上記のようなフラット化の事例と,10個のフラット化の要因が挙げられ,最後にアメリカはこれからどうすべきか,についてちょっとだけ書かれています(下巻を買わせるために,ちょっとだけ触れているのか)。フラット化の要因の説明が8割ぐらい占められています。
というわけで,フラット化現象についてある程度肌で感じている人にとっては,上巻は必ずしも読む必要がないかもしれません。
フラット化の事例としては例えば以下のようなものが挙げられています:
- インドへの様々なアウトソーシング(コールセンター等)
- アメリカの航空会社によるユタ州の主婦への予約受付アウトソーシング
- アメリカ軍によるイラクーアメリカ間遠隔操作/情報共有
- マクドのドライブスルー受付コールセンター
- インドの遠隔家庭教師
- ジャーナリズムにおける個人ブロガーの台頭
上記のうち,ユタ州の主婦による予約受付では,予約したい顧客視点で考えたとき,相手がインド人ではなく愛想の良いおばちゃん,という要素により,予約獲得率が30%ほどインド人より高いという効果があるそうです。
マクド(東京弁で言うとマック)のドライブスルーの事例が面白かったです。ドライブスルーで注文すると,数百キロ離れたコールセンターで注文を受付後,厨房に対し客の画像付きで注文を送付するそうです。これによって間違いが激減したとか。
次に,フラット化の要因としては例えば以下のようなものが挙げられています:
フラット化の要因については,コンピュータ業界に居る身としては結構馴染みのあるものが多く,初めて知るようなものはあまりありませんでした。
最後に,このような状況下,アメリカはどうするべきか,が書かれています。フラット化を促進させることで,アメリカ本国から単純作業が全てアウトソーシングされてしまい,本国の雇用が減るのでは,という意見に対し,反論しています。逆に雇用は増えるはずだと。
その理由としては,単純作業にかけていた時間をより高度な事に費やせるようになるから,という感じ。ただ条件として,怠けずにイノベーションを継続し,後進国に追いつかれないように努力を続ける限り。
やっぱりぼーっとしてたらインド/中国に負けてしまうから,努力あるのみですね。